霧子「??」
4月恒例のリーグ戦を終えて、オレは考えていた。
今年も菊池がリーグ戦を制覇。
まあ、5月にTWPが乗り込んでくるらしいので考えていたのだ。
すなわち、ベルトを取り返す人選を。
オレ「普通に行けば……。」
霧子「菊池さんでしょうね。」
リーグ戦で最強が菊池と確認が取れた今、こちらの代表はそうあるべきなのだろう。
しかし……。
オレ「菊池があのベルトに興味もつかね?」
菊池はWWCAのベルトも返上して、現在は無冠。
まあ、これは団体のベルト一本化も睨んでの考えだったのだが。
菊池自身も千春に勝ったことで執着は薄くなったようだった。
だからといってすぐに新しいベルトに興味を持つかは疑問だ。
霧子「とりあえず、相談してみては。」
オレ「そうだな。」
道場で、菊池に説明するとあっさりとOKをもらえた。
菊池「いいですよ。」
そうか、菊池はこういうやつだった。
頼みは断らない。
菊池「ソニックキャットとやって取るなら意味もありますしね。」
そして気を使わないような言い訳もしてくれる。
やれやれ……。
佐尾山「社長!」
話しかけてきたのは佐尾山だ。
佐尾山「あたしにリベンジさせてください!」
む……。
しかし、今回はなんとか一発で取り返したいのだが。
佐尾山「菊池先輩が取り返すんじゃダメなんです!」
オレ「短期間で差を埋められるほど、ソニックキャットは甘くないぞ。」
佐尾山の表情が怯む。
と、一瞬、目が潤んで見えて、オレも戸惑った。
佐尾山は絞り出すように言った。
佐尾山「社長、言ってくれたじゃないですか。」
オレ「へ?」
佐尾山「『お前のベルトだ』って。」
そうか。
菊池がオレに笑顔を向けた。
菊池「だって。」
どことなく嬉しそうに見える。
後輩の意地が嬉しかったのだろうか。
オレ「しょーがねぇなぁ!」
佐尾山の表情がパッと明るくなる。
現金な奴だ。
オレ「絶対に勝てよ。」
佐尾山「うん!」
ため息をつくオレを遠くから辻が見ていて笑っていた。
同期だからな、心配してたのかも。