春先は新世界プロレス最大のイベント、新世界GPの季節。
毎年、旗揚げされた五月に開催されている。
その前に、まずは四月。
伊達のIWWFに北条沙希が挑戦。
再三のパワースラムに耐えた伊達がシャイニングウィザードで勝利。
やはり伊達は強い。
一方でカンナのWWCAに龍子が挑む。
龍子がラリアート、ネックブリーカーと首攻め。
カンナが王座陥落した。
新世代の台頭を予感させる中、五月に新世界GPが開催される。
この前哨戦シリーズが異様だった。
シリーズ参戦選手はGP出場者の8名のみ。
最終戦までの試合は全てタッグマッチ。
つまり一日2試合しかやらない。
ひとつの興行は1時間で終わってしまう。
それなのに関西の各会場は4000越えの札止め。
恐ろしい人気である。
確かに全ての試合に見所があった。
GPに照準を合わせた新世代が新しい技を身に付けていたのだ。
龍子のプラズマサンダーボム。
来島の改良版ナパームラリアット。
北条のロイヤルDDT。
その中で異彩を放っていたのは新咲である。
彼女はコーナーポストを利用したミサイルキック、ムーンサルトプレスを習得してきたのだ。
新世界プロレスは長年シュート主義でやってきたためか、
プロレス的な飛び技を使う選手は皆無に等しかった。
グリズリーがミサイルキックをたまに使うくらいである。
なぜ飛び技が使われないか、理由は『当たらないから』である。
真剣勝負の舞台で悠長にコーナーポストに登っている時間はない。
そういった主義が主流だったのだ。
だが新咲はその主義を天性の身体能力で跳ね返した。
前哨戦で新咲はコーナーポストを三角飛び気味に駆け上がり、
近藤にムーンサルとプレスを決めて見せたのだ。
旗揚げ組に戦慄が走った。
新世代の勢いか、第一世代の意地か。
新世界GPはこうして開幕した。
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